GINZA SIX 2024 Autumn 「マッシュルーム プラネット」
きのこは生態系の中の「分解者」の役割を持ちますが、きのこに分解能力が生まれたのは約2億9千万年前と推定され、そこから植物の死骸の分解が安定し動植物が共生する生態系が生まれたそうです。
菌根菌が、植物が水や無機養分を吸収するのを促しているように、地中で多様な化学物質を操って栄養循環を作り出し、周囲の動植物を巧みにコントロールしているきのこ。最新の研究では、「きのこの胞子が上空で氷結して雲を作り“雨”を降らせている」可能性が明らかになってきたことも知りました。
研究者が「地球は “マッシュルームプラネット”といえるかもしれない」と語るほど、きのこは想像以上に地球上の壮大な生命を支えているようです。
きのこは、「菌活」における菌食材として、中でも腸活に役立つ食物繊維や、眠活や肌活に役立つビタミン・ミネラルなどの栄養素を多く含むことから注目されていますが、人は何故かフードとしてだけでなく、きのこの魅惑的な容姿にも惹きつけられます。
それはもしかしたら私達の体内の菌が、きのこの持つ「生命をほぐして循環させる目に見えない力」の恩恵にあずかれるように、きのこへの関心を促しているのかもしれません。
もしもきのこが、現代を生きる私たちの社会環境をも回復してくれるとしたら、管理された時間からのストレスや悲しい記憶を解きほぐし、生きやすくしてくれるかもしれません。そんな妄想から生まれたウィンドウです。きのこに守られている私達の生命を慈しむ秋を。
アートディレクター
佐藤寧子